プロアクティブ 成分の研究所

「学」(学術研究)の立場から「民間」(商品化研究)との連携を考えたとき、日本にはバイオベンチャーがまだほとんど皆無であり、やはりベンチャー先進国の企業の研究開発システムに学ぶ点は多い。
欧米では大企業の中にも自由な発想の先端研究所が存在し、多くのノーベル賞受賞者を輩出し、長期的にはその企業だけではなく科学技術そのものの発展に貢献している。
また多くのベンチャーは、大学からスピンオフした個人を中心とする民間研究組織であり、それ自体が企業として発展する場合もあるが、大企業と連携する場合もある。
日本では国立大学、国立研究所、企業間の人的流動性が低く、官尊民卑の風土が強い。
「第3の流れ」を育てるためには、大学・中核研究所・企業にまたがるフリーゾーンを形成し、その自由な環境の中からベンチャーを立ち上げることがカギとなる。
産業化につながる国全体の研究開発システムを考えるには、このような視点が必要であろう。 研究開発にダイナミズムを組み込んでいく施策も重要である。

報告書では、競争の奨励、公募と外部昇格制などについても指摘されている。
ファンディング(研究助成)・の多元化、国際的にだれでも応募できる個人向けファンドの充実、インディレクト・コスト(間接経費)の導入などが強く提言されていることも画期的である。
また、「さきがけ研究別」のような個人向けグラント(研究助成費)を拡大する場合、研究場所をどのように提供するかが問題となる。
「さきがけ研究」は主として若手研究者を対象にしているが、現行の大学では、助手や助教授は、研究開発のダイナミズム従来改変型と若手独立型の複線化へ「50年前、NIHはまったく変わったことをした。
素晴らしいと思った。
革命的なことだ。
それは、NIHが50年にわたって研究費を個人に直接に配ってきたことだ。 研究者の選抜は、政府の委員会でも職員でもなく、施設の委員会でもなく、申請者と同じ分野を研究している違う施設の科学者によって行われる。
研究費を取得した科学者はすべてを自分で決める権利があり、だれにも左右されない。 そして、3〜4年の研究費を取得して、その研究が成功かそれとも失敗かによって、次の研究費を取得できるかどうかが決定される。
これに対し世界中のほとんどの国では、50年前もいまも研究の方向を決める責任は若い科教授の許可なしに研究スペースを自由に設定することはできない。
研究助成費を獲得した場合に、若手研究者がよい研究環境の中で研究チームを立ち上げることができるよう、中核的研究所や大学のフリーゾーンに、H医学研究所型の先端ラボの研究スペースを設置することが望まれる。
もう1つの課題は、国の研究機関における国家戦略的研究や新たな中核的研究、基礎的先端研究など、いわゆる目的志向型の研究と、個人を主体とする研究とをどのように両立させるか、である。
そのコンセプトづくりには、1997年にA・c教授がアメリカの週刊科学論文誌「S」で発表した「NIHはそれを成し遂げた」という論文が参考になると思う。
その骨子を紹介しよう。 次に、国際性を持つことの重要さである。

報告書は「国際性と日本のよさを高める」「国際的視野に立った活動」「外国人研究者の積極的登用」、そして外国人が日本人とイコールフィッティングで研究できる体制を整え、外国研究者の割合が30%程度となることをめざし、そのサポート体制を整備することなどを述べているが、これも非常に重要である。
その上に立って、中核的研究所を中心に「第3の流れ」を育てることを提起している。
これは私・AとK教授の提案によって検討会でたびたび議論された「新幹線方式」にも相当するものであり、ぜひ実現したいものである。

しかし、報告書のそれは日本というシステムの枠を維持した上での国際化であり、「第学者にはなく、少数の上司に任されている。
アメリカのバイオ科学の研究者が自主的に研究計画を着手・実行できる理由は、大学あるいは施設の方策によると一部の人は思っているが、それは間違いである。
このような研究者の独立性ができた理由は、科学者が個人的に研究費を取得したからであり、学部長、学長あるいは大学の行政に恩恵を受けていないからである。
だから大学の政治に巻き込まれることもない。 大学側にとっては、ほかの大学が人材獲得のために競争をしているため、科学者に独立性を与えるしか選択の余地はない。
大学はこれらの科学者に教育的な貢献を期待している。 世界に開かれた国際研究所K教授と私が提唱する「新幹線方式」には、実はもう1つの意味がある。
それは、国際ハイウェイに連結する新幹線、すなわち枠組み自体が日本という制約を持たない、ボーダーレスな研究者の「国際的な競技場」ということである。
生命科学におけるC・S・H研究所やEMBL(欧州分子生物研究所)など、欧米には真に国際的な研究組織があるが、日本やアジアには皆無である。

日本が国際レベルの創造的マネジメントをするといっても、日本という制約を持っていては優秀な人材が集まりにくいのが現実である。
日本がアジアや世界に開かれた魅力ある国際研究所を持たなければ、国際的な大競争の中で、優秀な研究者を惹きつけることはできない。
そのような視点から、1980年以来、生命科学分野では、日本に国際研究所を設置することが待たれている。 1996年に文部省と日本学術振興会(JSPS)がNIHと共同開催したワークショップ「生命科学における日米交流・協力の今後の展開」では、国際スタンダードの国際分子医学研究センターを設立することが勧告されている。
さらに1977年に設立されたアジア環太平洋分子生物学ネットワークーMBNにより提唱された国際生命科学研究所IMBLは、そのような真の国際化の橋頭墨となるものであり、生命科学の基礎的先端的研究機構とともに、日本のイニシアティブで設置することが望まれる。

(IMB日米研究者による国際バイオメデイカルセンター設立の勧告本ワークショップ参加者は、日本に国際バイオメディカル研究センターを設立することを勧告する。
その研究員は既存の大学の教官を兼ねることができるが、当該センターは完全に独立体であるべきである。 当該センターは生命科学の最先端分野に焦点を絞った部門で構成されるべきである(例えば神経科学、脳機能、ゲノム、人間の発達、免疫機構、ヒト遺伝子など)。
センターはすくなくとも6部門以内でスタートし、新しい研究の機会が出現するごとに拡張していくべきである。
各部門は海外での高度な研修や研究経歴をもつきわめて優秀な研究者が主任で、2人の若手のしかし独立した研究者から構成され、その他のメンバーは、2〜5年の期間で赴任してきた海外からの「ビジター研究者」で占められるだろう。
比較的短期のアポイント制度である目的は、若手研究者の積極的な招聴のためと、海外からの研究者により多く日本での研究経験を積んでもらうためである。 センターでの研究はもちろんのこと、日常活動において各部門の長や「ビジター研究者」は国籍のいかんにかかわらず英語を使うべきである。
海外からの研究者にとってセンターが最も魅力にあふれ、かつ支援的であるために、センターは適切な住環境を研究者とその家族に提供すべきである。

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